ギャラリーK 美の起源展 樋口慶子さんの絵を見て

ギャラリーK  美の起源展
樋口慶子さんの絵を見て

何だろうか、この空気、この絵の周りに漂う空気は、それはロマンか?ロマン?そうでもない、空気、それはいい感じか?

そうです。樋口慶子さんの絵はその空気がありその色は幽玄の世界へ旅たたせてくれる。その空気、これほどまで大事なのか。旅情、そうでもあるし、感傷的な切ない感じがある。

過去の作品においても具象画の時、その感傷はあった。何だか切ない。

樋口さんは美しい人であり、心も切ない物静かな人だ。その人が見る世界は切ないのだ。


「春」

これはもっと明るい、その心、詩的な抽象画。かつてこのような感性に染み込むような絵画を見たことがあるだろうか。

あるとすれば、ちょっと昔の1980~1990年代の少女漫画にあるようなあの悲しさ、恋に迷う、恋に酔いしれるあの漫画のようなものがあった。

ベルサイユのばら

ときめきテウナイト

エースをねらえ!

ああ言った感傷は女性にしか描けないあの世界がある。それが芸術家の絵を描く人、純粋絵画を描く人に任せるとこういう作品ができるのだ。

馬と少女を描いたものがある。今回の作品の中でもこれは形が残っている。印象だけでもなく、ただ印象派のように光を表現するのでもない。

むしろ象徴派にあって抽象表現主義の新しい風穴を開けた、そして女性のきめ細やかな感性で描かれたファインアートであると言えます。

あと、渡り鳥を描いたものがある。これは鳥の群像が壮大なスケールで色としてバタバタとまるで大軍のように押し寄せる見せ方が印象的です。これもまた何か悲しくもある。

悲しい、

悲劇は芸術の分野の中でも最も尊い格調の高さで描かれ、人々の心の悲しみを慰め、いたわる。それはアリストテレスも「詩学」で言っており、シェークスピアもそのことを戯曲の中で証明している類のものであります。


悲しい、しかし、懐かしい。

懐かしい、愛おしい、そして、悲しい。

この美の起源展において樋口慶子さんは人間の起源、美の可能性の奥には人類のはるか昔の思い出にあるということを作品で描き問いかけている。

悲しさは、

樋口慶子さんの心はそういう孤独と向き合うことがあるのだろう。人生観が絵の表現に大きく影響を表すし、深い人生観を抱き、そうやって生きてきたのであろう。

生き様が、美しくあるというのは大事で、人生の深みは懸命に日々を生きる中で絵画に表出してくるのだ。

技術さえあればというものでなく。技術だけではやはりこの感傷は描けない。切なく、悲しい。



「Time be sleep」
この作品も第一印象が切ない、そして、美しいという深みにまで、鑑賞時間も長く、見ていられる。不思議な世界観がある。カラスのようなフォルムが散らばっているが、これは黒色の効果が出てまわりのメインの赤色が引き立っていて品がいい感じになっている。

作者はどのような気持ちなのだろうか。

悲しみとか悲劇を描いたエドワルド・ムンクという画家がいましたが、そういうドロドロしたものでなく。

樋口慶子さんの絵画の全体の空気は格調高い品性なのだ。それが作品の波動になっていて展覧会の中でもいい空気を醸し出している原因と効果を立っているのであります。


抽象画の面白いところは形にとらわれないで心の、精神の見えないポテンシャルをキャンバスにいかようにでも表現できることである。
形を上手に描くだけではここまでたどり着けない。形だけ描ければ職人にはなれるであろうが、その先にあるアートにはたどり着けるためにはいかばかりフォルムから解放されなくてはならないだろう。
あと、このような樋口慶子さんのような絵を描けるようになるには人生観の鍛錬も必要に思います。

意地悪であっては描けないでしょう。芸術家はすべからくして人生を描かねばならんでしょう。人生の日々の生活に輪郭線を引くように美しい旋律を奏でることも、絵を描くことでそれがいつの間にか人格の美しさ、高さがキャンバスに出てくるかもしれません。

そういう意味で名画と言えるのではないでしょうか。

まだ、展覧会はやっています。是非とも観てみて鑑賞して何か得る事もあるかもしれません。

あなたのハートに何か旅情を思い立たせ、悲しさもやってくるかもしれません。


絵画は見ればいいというだけでなく、感じることでも楽しめるのだと教わった気がします。

コメント

  1. 樋口慶子さんの作品を拝見しました。とんでもない素晴らしい現代アートです。一見するとなにがかいてあるかわかりませんが、よくみると花だとわかります。ほとばしる熱いアートの想いが伝わりました。すばらしい絵です。

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