灰吹から蛇が出る  三人展 佐藤ひろみ とりのこいろ 清野融  大山現代の美術館にて 2025年3月16日(日)〜5月18日(日)  展評:本多裕樹





 灰吹から蛇が出る  三人展

佐藤ひろみ とりのこいろ 清野融


2025年3月16日(日)〜5月18日(日)まで


展評:本多裕樹





先日、伊勢原に旅立った。そこに逗留し観光を楽しんだ。何も身寄りも知り合いも無く。ただ、異界の大山が隠れていた。そこに行くにはバスで20分くらい乗る。その翌る日、大山現代の美術館に行く。そこは古民家の伝統的な宿を食事処にしてその二階に本日の展覧会の会場であった。一見、茶道世界の空間で礼儀をもって恭しく

入る。






威高く迫力のある作品が何点かいならび中央に屏風が広げられ展示の空間の地の利を十全に空気感を作り放つ。








清野融氏のアートが我らを威圧する。





その空間の中央にピンクのワニが貝の上にいななく。


貝は女性器を象徴している。佐藤ひろみ女史の作品の主題である女性性である。





土偶のぬいぐるみ、ワニの立体。



インスタレーションを演出している。


生殖と威圧


女性性と王権または男性性



その中で とりのこいろ の縫いぐりみの可愛い造形がある。とてもキュートだ。









佐藤ひろみ女史との出会いは2年前からである。豊洲の国際展でご一緒になり、そこが出会いで、それからちょこちょこ展示に会うことになる。その前から、銀座のギャラリーGKで作品は観ていた。だから、まったくお初でなく作品は知っていました。作品はいたるところで出品され名前も知られている作家だった。







ギャラリーGKの星野オーナーからは事前に佐藤ひろみ女史の作品のプロモーションは受けていた。作品の意図はそこで知った。そこから奥深く探究することになる。






佐藤ひろみ女史の作品はヴァギナを造形していて女性の象徴を表している。


人間にとって大事な場所であり、生命の源、または生命の起源である。そこに、育む女性性、ヴァギナから宇宙が見える世界であったのだ。




ヴァギナのシンボルから様々な世界が広がる。王もまた女性器から生まれあらゆる生命の根源からあらゆる生きとし生けるものが誕生し進化していく。



ギリシア神話においてもまず地母神ガイアがあり、この女神は男性を生み出しそれをウラノスと言う。全ての源がまさに女性から生まれた伝説がある。




この展覧会の根源がヴァギナであり、そこから王権が出現、そして諸天の天使たるキュートなぬいぐるみや愉快な世界が創造され国ができて平和になっていく。


平和的な世界にもやはり王権もある。男性性がないと規律や法律、枠ができない。王権もまたあるのだろう。




この土偶のような人形はなんであろうか。


これもまた御神体なのだろう。


私の地元には大宮という都市があり、そこにはかつて昔、古代において男根信仰があった。男根が崇拝され、あらゆる生命と生殖と繁栄を願われていた。このヴァギナ人形も信仰の対象としてのエチュードを表していると謎が解けていく。




佐藤ひろみ女史はいたって普通の人であり、とくに芸術家特有の狂ったところも無く常識人である。そして、勉強熱心である。ある展示のオープニングパーティーの二次会で酒宴をご一緒になった時、思想史の研究者の宮田徹也氏から講義を受けようとしていた。自分より若い人からも学ぼうとするところが若い精神を感じた。学ぶことを諦めていない。新しい考えを学ぼうと、吸収して美学を高めている。佐藤ひろみ女史自身が教育者でもある。若く、学び、受容性もある。そこも女性性であるのだろう。



女性器から生命が、灰吹から蛇が出る。蛇的資質はあらゆる生命の根源で海から出てきた生命、それは性の生きる源で爬虫類のポテンシャルを誰もが内在させている。それは生命そのものであり、灰吹から様々な存在が出た。そうして世界は創造されていった。蛇は人類に知恵を誘い、世界は進歩する。王権を作り、現象した。



あらゆる生命、諸天の天使が とりのこいろ の作品の役割を担い。



清野氏は奥行き深い、幽玄を表現し、品のある貴族のような気風もありながら王権をもって秩序をなす宰相の役割をなしている。そこに作品の中に無骨な荒々しさもあり、威厳がある。





大山現代の美術館にて、

この世界、宇宙の曼荼羅ができあがった。

それぞれの3人が天地を創造した象徴と具現、表現であったのだった。







その後、私は一階食事処で親子丼を食べた。

山を降り、ホテルに帰った。


良きアートの思い出を名残ながら。







令和7年3月23日 本多裕樹


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