「アルコル橋のナポレオン」 作:アントワーヌ・ジャン・グロ 制作:1797年頃 所蔵:エルミタージュ美術館

 「アルコル橋のナポレオン」

作:アントワーヌ・ジャン・グロ

制作:1797年頃

所蔵:エルミタージュ美術館


これはこれは壮絶な、激しい絵であった。深く、感動的な絵筆の激情、そんな思いにさせる一枚の絵である。ナポレオンは旗を持ち、軍を指揮して先頭に立って号令している。劇場とも言えるこの絵の印象から、ナポレオンは冷静にすら思える。将たる何かを思わせるような、風貌である。基本、ナポレオンはイケメンに描かれている。若い時は誰もがイケメンである。背景の雲と煙立ち込め、今まさに戦場とも思える景色、この絵にはナポレオン一人しかいない。先頭に立ち、後ろに描かれていない軍人たちを導いているのだろう。この絵はよく描かれている。細かいところまで丁寧に描写されている。ナポレオン本人からの依頼であったのか?それとも画家の気まぐれであろうか?おそらくであろうが注文を受けたのであろう。この絵を見て、フランス人も鼓舞されて勇気を持つに至ったのであろう。ある意味プロがパンダであるし、新しい時代の宗教がであるともいえよう。つまり、ナポレオンは神格化されたのだ。この絵でもって、絵に描かれるだけで神格化されるようだ。なかなかその時代において絵に描かれるのは高貴な者だけであっただろう。ナポレオンは英雄として描かれています。この絵は感情に訴えかけるそのような情感を放っていて、戦場における英雄の臨場感が漂っています。そういう絵をロマン主義と言っている人もいます。後々の芸術家たちはそれを自分のものにしてモネとかルノワールといった印象派の絵の描き方の基礎になっていくものでした。リアルな絵ではあります、この絵は、しかし、完全な日本におけるリアリズム写実主義ではないように思います。絵の具の限界もやはりあったであろう。当時1797年の制作ではありますが、今の程のように絵の具が充実はしていかなったでしょう。この絵を見るとほとんど土系の絵の具であります。もちろん鉛も使っているように思いますが、手に入る絵の具も今ほどではない、それであっても名画を描きナポレオンを描く事で名画となりうる。モデルも良かったし、絵も高い技術で描かれている。二つに恵まれて時代に残っていると言えましょう。やっぱり名士のモデルっていうのもけっこう大事かもしれませんね。今風に言えばインスタ映えという事でありましょう。普通にカッコいい。これを鑑賞した市民はナポレオンを褒め称えるだろう。ただ、絵画のワンシーンだけで多くの支持を得ることはスペインの王室がそうかもしれない。あの宮廷画家ゴヤの絵、ベラケラスの絵のあの威光ゆえにその名をその存在を歴史に残るに至ったのである。それくらい宮廷画家の絵のセンスと才能は重要なキーポイントであるだ。昔は写真なんてものはなかった。絵に描かれる人は貴族とかそう言う名士のみであったのだ。いわば権威の象徴であり、王の位の特権であったのだ。

コメント

  1. 感動的な素晴らしい絵に出会えたようですね。
    これも創作活動の源になるりますね。♪

    以上。帰山一総でした。

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    1. あの近代のフランスの美術が絵画芸術の極だったと思います。その後、印象派など異端の美術が出てきて詩の世界でもボードレール「悪の華」など、またクールぺなど出てくるのですが、高みに達すればそれ以上の次元が出てきます。そういう意味で歴史の弁証法が絵画の世界にもあります。創造、破壊、再生、維持、破壊などを繰り返し新陳代謝をしているのも事実です。そういう意味で近代のナポレオンはその象徴だったのではないかと思っています。コメント感謝します。

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