理宇 個展「エナジー」 奥野ビル202 アートスペース銀座ワン にて 展評:本多裕樹

 





 理宇 個展「エナジー」

奥野ビル202 アートスペース銀座ワン にて 展評:本多裕樹




理宇個展

「エナジー」


2024年12月16日(月)~21日(土)

13:00~19:00(最終日17:00まで)

アートスペース銀座ワン

東京都中央区銀座1-9-8

奥野ビル202






銀座を回りめぐり、昭和な世界観が残っている奥野ビルに入り、今日の目当ての展示を観に行く。それは、


理宇氏の個展である。氏とは何年か前から展示が一緒になったりして知己の関係である。まだ、親密という関係でないので今回の個展はフラットな感覚で作品に挑めることができると思います。あまり仲が良いと贔屓に見てしまうこともありますので、良い距離感で作品に挑むのである。


奥野ビルに入り二階に様々な部屋があり、銀座ワンに入る。あまり大仰な挨拶は避け、すぐに芳名帳に名前を筆記して、そして作品を観るスイッチが入った。











 



まずはこの一点、これは怒っているのかと思う。睨みをきかせて展示場全体に緊張感が放つ力、激しささえ感じる魔術だ。これは肌が日焼けているのか、それとも野獣の資質によって太陽そのものに捧げられる生贄のインカ帝国の貴族であろうか。髪はライオンのような色で、アフリカの天然の野生性を感じ見る。いつまでも怒っている。しかし、この怒りが理宇氏の基本的なエナジーなのだとこの一点からわかる。



目が鋭い、





 

昔、私の世代より前にヤンキーとか暴走族というのがあった。彼らもまた野生的で何をしでかすかわからない。そういう暴徒であったり若き力を主張し、社会を否定し、一種の無政府主義を生きているあの自由さが、もしくは、これは筆者の時代であるがガングロとかマンバ、ギャル男、チーマーなどの若者のアナーキー精神が社会や世界へ主張をしている。



この絵もそういうあらゆる制約を破壊して、魂の放つ光を爆発させ、それが怒りに、これはポジティブな怒りになっている力がある。いわゆる太陽族なのだ。





これは今回のメインの作品であろう。キリキリする発熱、エネルギーのメルトダウンをひしひしと感じる。

少女なのであろうか、これは何かの化身であろう。目は天を仰ぎ睨みを効かせている。インドの神話のように裸で戦いを挑戦しているかのような必死な力ある絵画だ。一瞬、恐ろしくもある。


ひび割れのようなものが表現されているが、あまりの光の熱さに時空が壊れていく様が見える。



見ていると火傷しそうだ。


そして、恐ろしい。


青銅の顔はいわゆる神像を示唆する象徴が感ぜられる。ほとんど力技で鑑賞者を圧倒する暴力でさえあるエナジーだ。

 

ほとんど、怒りや挑戦である。



理宇氏は日常において今はゴッホやゴーガンのような熱心さで制作している。しかも、その制作は激しささえある。人生の全てをキャンバスにぶちこめている。すさまじい力である。また、すさまじいエナジーだ。熱量も、火力も爆発している。


思想的にも恐ろしい力でそれが作品に表出されている。


若さゆえか、


この制作ができるのは20代から30代の奇跡の時代だ。今、そのように描けるのは奇跡の時代と言えよう。


爆発は一生続くかわからない。しかし、理宇氏は勝負の時は力技であり、ある種の天才性を見せつけるが、普段の制作は落ち着いたものを描いている。








 





 

このように落ち着いた作品を描き、抒情性の溢れる雰囲気もある。多分、こういう感情の繊細さが一つの才能として抱くものを持って いる。悲しみも怒りもかかえ、世界を観察し、人を見て、それを心の中からイメージとして把持している様子がうかがわれる。


悲しみの表現も、それが絵の感傷を漂わせる。もしかしたら、普段は優しい人間であり、時には激しい感情に絵に向かうスタイルになっていくのでは、普段はとても優しく、人の悲しみを知る人であるのだとこの抒情の作品でわかってくる。涙の咽ぶ予感すら絵に滴っている様子だ。

 









 












この絵は鏡の世界という設定で、いずれ消えゆく世界であるそうだ。重層的コンセプトは鑑賞者の知的好奇心をそそるものがある。この絵は何らかの映画のエピローグのように寂しさと、また希望の予感がある。これはいずれ消えゆく世界に別れを告げている。










 

これはSFの世界の絵であろう。見て一見そうだ。誰もがそう見るだろう。これは平和的な絵かというとそうでもないのではと筆者は考えるのである。機械が一般化された時代、AIに人類が支配された世界で、この少女のメカが救世主になって何かの戦いに挑んでいる様子を想像する。メカそれ自体に趣味性もあるし、趣味その見方でいくならば、プラモデルやそういう世界、SFが好きな方であれば様々な想像をふくらませこの一点の作品に物語が創作されるだろう。


この絵は様々な複雑な絵で難易度も高く、直に見ればわかるが日本画のようなマチエールを持っている。素材に土を使っているようだ。作品の内容も技巧的であるが、絵作りも大変手間のかかるものを感じました。










 

                  ◯

今回、理宇展に行き、一番に若き血潮を感じた。筆者は目が火傷するくらい熱を感じ、確かに個展のタイトルのように「エナジー」そのものであった。趣味の強いものもあったし、原始的にさえ見える絵もあった。鑑賞する方も緊張感があったと思います。社会や人生に睨みを利かし挑戦する態度や、燃焼するまでこの芸術を続いたとしても、理宇氏は抒情性もある様子があるので様々な顔を見せてくれるであろう。怒りと爆発、悲しみと抒情性を二つの二面性をもった芸術家として今後も作家活動を続けていくことになると思いました。


良き展示会であったと思いました。


ありがとうございました。




展評者:本多裕樹




















理宇個展

「エナジー」


2024年12月16日(月)~21日(土)

13:00~19:00(最終日17:00まで)

アートスペース銀座ワン

東京都中央区銀座1-9-8

奥野ビル202











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