大庭綾太 初個展   江古田カフェ・フライングテイーポット5月1日(水曜日)~5月6日(月曜日)

 大庭綾太 初個展

江古田カフェ・フライングテイーポット5月1日(水曜日)~5月6日(月曜日)






 朝の爽やかな空気に江古田駅を下車して、彷徨う。しばらくこの街を歩き楽しむ。少々迷子になってしまったが、11時に開店するカフェを探し、そこには大庭氏の個展が開催されている。


11時前なのでコンビニのイートインでコーヒーをすすり時を待つ。


そして、地下一階の階段を降り展示を観る事になった。


暗い世界に静謐の空間、そこに大庭綾太の作品を対峙する。





静かにこの作品をじっとみた。空間が染み渡る。静かな空間感覚の世界、どこか雨の降っているような沈黙を鑑賞者の私に伝わってくる。作者はあまり主張しないような、自然の中に溶け込んで、入り込んで大いなる自然と一体となっているような、優しさを醸し出している。




不思議な空間


日本的山奥のフィールド


自然、山岳の静けさ





まるである戦場、たとえば関ヶ原の合戦前の朝の静けさと雨の、また、ミスト霧の世界、山々の天気のうつろいやすい高尾山の瑞々しさのようだ。


むしろ、この美術作品の中で、これから起こる騒がしさは無い。ただ、自然の生命宿り気がどこまでも続くような、


私はこの作品を見て、スタジオジブリの「もものけ姫」を思い出した。あの山岳世界、厳しさの中に人間が人間を主張しないで自然の中に、また、人間も文明も自然の一部として漂うように一つになるようなそんな日本の自然を描いているように思う。


この部分はまさに山、または岩のような、それも聖なるものすら感じる。大庭氏のこのアート作品には基本、水の感覚がある。この墨のしたたりですら偶然の手法をとっているかもしれない。偶然と作為と無為、無の中に無意識における自然との一体と静かな絵に、私は魅了された。




日本のサム・フランシスなのではと思った。サム・フランシスも日本の美術に影響を受けていたが、大庭氏は純粋な日本人である。


日本の美術の伝統にこの境地がある。


水墨画、山水画、墨の表現、私たちはそれらをお寺や茶室で見ているし、無意識にそういうアートを見ているかもしれない。


あと、日本は自然と一体となった、また、人間も草木や動物、と同じように人間もまた自然なのだ。そういう自分を主張しない生命の秩序を守り、調和していく精神があるだろう。




大庭氏は絵を観る限り、まったく自分の我を主張しない。大人であると思った。子どもっぽさが無い。むしろ、大いなるものに自らをゆだね生命を生かしめ、和を大事にしているように思う。


そこに、私は日本の神道をみた。


日本の神道は自然崇拝である。岩だったり滝だったり、川であったりあらゆる天気、星、そういう自然に対して畏敬を抱いているのだ。その自然に信仰をもって静かに、自己主張する事なく、優雅に生きていく毎日があるのだ。


大庭綾太を見ているとそれを感ずるのだ。


余白の部分があるが、これは光なのだろう。



雨つゆに濡れた世界、または雲の隙間から光が流れ出でて太陽の、山岳の光を与えている。そこに光明を感ずるし、希望もある。


救いがあるのだ。


書作品でもあるのか、


絵画なのか、


どういうマターなのか、


それは神秘空間を表出するフィールドアートであろう。


かえって、大庭氏の絵を見ていて、清々しく感じるし、心臓が清まる感覚になる。


人に癒しを与えるアートだ。


けばけばしないし、人の道徳を踏み躙ることは全く無い。


静かな神聖な美術だと感じた。



清めの絵であるし、鑑賞者の心を浄化してくれる純粋で清い心を持った作者だと思った。


どこも挑発することは無い。


こういう自我を主張しない美術もあるのだ、そういう意味では新しい精神の絵画だと思う。


自己中心的な要素が全く無い、まったくの自然だ。


無為自然の世界であり、本来の日本美術だと観てわかる。



この鑑賞時間にずっと自然の世界、森の世界、山岳の森林の地を旅しているかに思えるほど、美しい気持ちにしてくれる。


禊を受けたような、そんな感じである。



神社のような世界、清まる空間で、展示場を絵によって清めている風を感じた。


黒の世界、この黒を使うには、精神面がかなり影響する。ダークサイドに傾いたり、力に激しくなったりするが、大庭氏の黒は静かで人を逆撫でするところが無い、むしろ清めの世界にしていった。そういう作家は大庭氏しか今まで観たことがなかった。





とても、素晴らしい作品であり、とても、素晴らしい人格を持った作家なのだと思った。


芸術家は破滅的な人生を送ることが多いが、大庭氏は幸せに生涯を生きて今後も素晴らしいアートを創造して、世に発信し続けるだろうと思います。また、世界を清めていくのではと私は想像します。



何はともあれ、心清まる展示だった。


ここまで読んでくださり感謝します。


令和6年5月5日本多裕樹 記


江古田カフェ・フライング。テイーポット5月1日(水曜日)~5月6日(月曜日)






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